半年ぶりほどになる投稿である。

最近は、マネジメントについて考えることも多くなり、1年ほど前と比較して自らの視点が大きく変化してきたように感じている。

そこで、十数年前に読んで良かった本を読み返し当時感じたことと、今新たに気付いたことを比較してみたいと思っている。

墨攻』とは

酒見 賢一 氏による歴史詳説である。

書名にあるの「墨」は、諸子百家墨子と通ずるものである。墨子というのは、一説に孔子よりもあと孟子よりも前に活動していた思想家・思想集団であったと言われている。

兼愛・非攻といった「墨守」の思想をかかげ、また、守りに通じた軍事集団でもあったようである。

ただ、この集団は時に趨勢を極めたとも言われるが、およそ2000年にわたり語られることもなく、今となっては完全な文献すら残されていないのである

本書はそのような、思想家・思想集団についてフィクションを混じえてドラマチックな描写を加えつつ、墨家について、引いては中華思想についての研究事情について一石を投じるような記載もみられる。

本編についての言及

兼愛・非攻思想と実際の乖離による葛藤

これについては、中国思想における兼愛・非攻思想を参照いただきたい。

組織運営において非情かつ公平な評価基準の必要さ

正しいことを行ったメンバーは褒め、間違ったことを行ったメンバーには注意をする。言うは易いが、注意を行う時、それを聞いて貰える程の信頼の貯金がないときびしいのかもしれない。

組織化された教団の退廃の模様

墨家集団というのは、思想集団であり軍事集団でもあったことは上述の通りである。

ただ、時代を経るに従いそれぞれが対立し出すような描写は、全ての組織がはらんでいる問題のようにも感じた。

非合理的で感情に流されやすい人間の性質

本書のクライマックスにあたるのだが、必ずしも合理的に動かない人間の性のように感じた。

媒体について

小説・漫画・映画がある。それぞれ展開や結末が異なるのだが、私は専ら小説番をお勧めする。文集文庫番は活字も大きく、本編は150ページ程なのですぐに読了できる。

以上。